本人確認の決まりや確認方法【古物商実務】1万円の線引きと7品目の例外

「いくらから本人確認が要るのか」「売るときも確認するのか」──買取の現場でいちばん多いご質問です。ここは令和7年10月の規則改正で対象品目が3つ増えました。古い解説のままだと確認漏れになります。この記事では、条文をそのまま示しながら、いま何をすればよいのかを整理します。

本人確認が必要になるのは、どんなときか

出発点は古物営業法第15条第1項です。

古物営業法 第15条第1項(確認等及び申告) 古物商は、古物を買い受け、若しくは交換し、又は売却若しくは交換の委託を受けようとするときは、相手方の真偽を確認するため、次の各号のいずれかに掲げる措置をとらなければならない。

ここで押さえておきたいのは、義務がかかる場面が3つに限られていることです。

  • 古物を買い受けるとき
  • 古物を交換するとき
  • 売却または交換の委託を受けるとき

裏を返すと、自分が仕入れた品物をお客様に売るだけの場面は、この条文の対象ではありません。「販売のときも本人確認が必要」と書かれた解説を見かけますが、それは本人確認ではなく帳簿への記載義務の話です(後の見出しで分けて説明します)。ここを混ぜて覚えていると、現場で必ず混乱します。

金額の線引きは「1万円」──ただし7つの例外があります

第15条第2項が、確認をしなくてよい場合を定めています。

古物営業法 第15条第2項 前項の規定にかかわらず、次に掲げる場合には、同項に規定する措置をとることを要しない。
一 対価の総額が国家公安委員会規則で定める金額未満である取引をする場合(特に前項に規定する措置をとる必要があるものとして国家公安委員会規則で定める古物に係る取引をする場合を除く。)
二 自己が売却した物品を当該売却の相手方から買い受ける場合

この「国家公安委員会規則で定める金額」が1万円です。

古物営業法施行規則 第16条第1項(確認等の義務を免除する古物等) 法第十五条第二項第一号の国家公安委員会規則で定める金額は、一万円とする。

「1万円を超える」ではなく「1万円未満は免除」です

条文は「一万円未満である取引」を免除しています。つまりちょうど1万円の取引には本人確認が必要です。「1万円を超えたら」と覚えていると、1万円ぴったりの買取で漏れます。細かいようですが、実際に指摘を受けやすいところです。

金額に関係なく本人確認が必要な7品目

次の古物は、たとえ100円の買取でも本人確認が必要です。

古物営業法施行規則 第16条第2項 法第十五条第二項第一号の国家公安委員会規則で定める古物は、次の各号に該当する古物とする。
一 自動二輪車及び原動機付自転車(これらの部分品(ねじ、ボルト、ナット、コードその他の汎用性の部分品を除く。)を含む。)
二 エアコンディショナーの室外ユニット及び電気温水機器のヒートポンプ
三 専ら家庭用コンピュータゲームに用いられるプログラムを記録した物
四 光学的方法により音又は影像を記録した物
五 電線
六 グレーチング(金属製のものに限る。)
七 書籍
号条文の表現具体的には
一自動二輪車・原動機付自転車(部分品を含む)バイク、原付とその部品。ねじ・ボルト・ナット・コードなどの汎用部品は除きます
二エアコンの室外ユニット、電気温水機器のヒートポンプ令和7年10月に追加。エアコン室外機、エコキュートのヒートポンプユニット
三家庭用コンピュータゲームのプログラムを記録した物ゲームソフト
四光学的方法により音又は影像を記録した物CD、DVD、Blu-ray Disc など
五電線令和7年10月に追加。銅線などの金属盗対策
六グレーチング(金属製のものに限る)令和7年10月に追加。側溝のふたなど
七書籍本

令和7年10月1日から3品目が増えました

増えたのは室外機・ヒートポンプ/電線/金属製グレーチングの3つです。いずれも金属盗の対策として加えられました。金属くずを扱う事業者の方は、山口県の金属くず類回収業の許可・特定金属くず買受業の届出とあわせて、確認の運用を見直してください。

確認する内容と、4つの方法

買取カウンターで無地の身分証カードを差し出す手と、買取伝票に記入する手のイラスト

伝票に書いてもらいながら、身分証で照合するのが確実です

確認する項目は、条文で決まっています。住所・氏名・職業・年齢の4つです。この4つがそろっていないと、確認したことになりません。

方法は第15条第1項の各号に4通り示されています。

号方法現場でのやり方
一相手方の住所、氏名、職業及び年齢を確認すること身分証明書の提示を受けて確認する。いちばん一般的な方法
二住所・氏名・職業・年齢が記載された文書(署名のあるもの)の交付を受けること買取伝票に、目の前で書いて署名してもらう
三電子署名が行われた電磁的記録の提供を受けること非対面取引での電子的な確認
四前三号に準ずる措置として国家公安委員会規則で定めるもの非対面取引の各種方法(規則に列挙されています)

店頭であれば、買取伝票に目の前で住所・氏名・職業・年齢を書いて署名してもらい、あわせて身分証明書で照合するという進め方が確実です。第2号の方法をとりつつ、第1号の確認も同時にしている形になります。

使える身分証明書

  • 運転免許証
  • マイナンバーカード(個人番号カード)
  • パスポート
  • 健康保険証・各種公的証明書 など

マイナンバーカードを確認に使うときは、個人番号(マイナンバー)そのものを控えたり、裏面をコピーしたりしないようにしてください。番号の取得・保管には別の法律の制約がかかります。確認したいのは住所・氏名・年齢であって、番号ではありません。

本人確認をしなくてよい、2つの場合

先ほどの第15条第2項が定める免除は、次の2つだけです。

  1. 対価の総額が1万円未満の取引(ただし、上の7品目は除く)
  2. 自分が売った物を、その相手から買い戻す場合

2つ目は見落とされがちです。自分の店で売ったカメラを、同じお客様から買い戻すようなケースがこれにあたります。「誰に売ったか」が自店の記録で分かるためです。

「売るとき」の話は、本人確認ではなく帳簿記載です

冒頭で触れたところに戻ります。品物を引き渡したときに相手方を記録する義務は、第15条ではなく第16条(帳簿等への記載等)にあります。義務の中身も、対象も違います。

古物営業法施行規則 第18条第1項(帳簿等への記載等の義務を免除する古物) 法第十六条ただし書の国家公安委員会規則で定める古物は、次の各号に該当する古物以外の古物とする。
一 美術品類
二 時計・宝飾品類
三 自動車(その部分品を含む。)
四 自動二輪車及び原動機付自転車(これらの部分品(対価の総額が第十六条第一項で定める金額未満で取引されるものを除く。)を含む。)

読みにくい条文ですが、意味はこうです。引き渡し(販売)のときに帳簿記載が必要なのは、この4区分だけ。それ以外の古物は、売ったときの記載は不要です。

さらに、第18条第2項に例外があります。

古物営業法施行規則 第18条第2項 法第十六条第四号の国家公安委員会規則で定める古物は、自動車である古物とする。

法第16条第4号は「相手方の住所、氏名、職業及び年齢」を記載する規定です。つまり自動車を引き渡した相手方については、住所・氏名等の記載までは求められていません(取引年月日・品目・数量・特徴の記載は必要です)。

整理するとこうなります

  • 買い取るとき=本人確認(法15条)。1万円未満は免除、ただし7品目は金額に関係なく必要
  • 売り渡すとき=帳簿記載(法16条)。美術品類・時計宝飾品類・自動車・自動二輪車の4区分のみ
  • この2つは別の義務。混ぜて覚えない

なお第4号は、バイク・原付の部分品のうち1万円未満で取引されるものは対象から外れます。同じ「バイクの部品」でも、買取のときは金額に関係なく本人確認が必要(規則16条2項1号)、売り渡しのときは1万円以上のものだけ帳簿記載、という違いになります。

不正品の疑いがあるときは、警察官に申告します

買取伝票の上でペンを止めた手と、電話の受話器に伸ばした手、カウンターに置かれた中古カメラのイラスト

おかしいと感じたら、まず手を止める。それが「直ちに」の第一歩です

古物営業法 第15条第3項 古物商は、古物を買い受け、若しくは交換し、又は売却若しくは交換の委託を受けようとする場合において、当該古物について不正品の疑いがあると認めるときは、直ちに、警察官にその旨を申告しなければならない。

「直ちに」とあるとおり、あとで報告すればよいというものではありません。身分証を出し渋る、品物の説明があいまい、同種の品を短期間に何度も持ち込む——といった場面では、無理に取引を進めないことです。本人確認は、断る理由をつくるための手続きでもあります。

怠ったときの罰則

古物営業法 第33条(抜粋) 次の各号のいずれかに該当する者は、六月以下の拘禁刑又は三十万円以下の罰金に処する。
一 第十四条第三項、第十五条第一項、第十八条第一項又は第十九条第三項若しくは第四項の規定に違反した者
二 第十六条又は第十七条の規定に違反して必要な記載若しくは電磁的方法による記録をせず、又は虚偽の記載若しくは電磁的方法による記録をした者

本人確認(第15条第1項)も帳簿記載(第16条)も、同じ六月以下の拘禁刑又は三十万円以下の罰金です。あわせて、公安委員会による営業停止などの行政処分の対象にもなります。

罰則の重さ以上に大きいのは、盗品が自分の店を通ってしまうことです。本人確認は、その入口を塞ぐための仕組みです。

よくあるご質問

Q. 常連のお客様でも、毎回確認が必要ですか?

A. 条文に「常連は除く」という規定はありません。取引ごとに必要です。名前と顔が分かっていても、住所・氏名・職業・年齢を取引ごとに記録してください。

Q. 8,000円の本を買い取りました。確認は要りますか?

A. 必要です。書籍は規則16条2項7号に挙がっており、金額に関係なく本人確認が必要です。

Q. エアコンの室外機を5,000円で買い取る場合は?

A. 必要です。令和7年10月から、エアコンの室外ユニットは金額に関係なく本人確認が必要な品目に加わりました。

Q. 身分証のコピーを取っておく必要はありますか?

A. 条文はコピーの保存までは求めていません。求められているのは、住所・氏名・職業・年齢を確認し、帳簿等に記載しておくことです。ただし個別の運用として控えを残している事業者も多く、その場合は個人情報の管理に注意が必要です。

Q. 未成年から買い取ってもよいですか?

A. 年齢の確認が必要な理由のひとつがここです。未成年との取引は、後から取り消される可能性があります。保護者の同意の確認など、店ごとのルールを決めておくことをおすすめします。

山口県で古物商をされる方へ

本人確認と帳簿は、許可を取ったあとにいちばん指摘を受けやすいところです。とくに令和7年10月の改正で品目が増えたため、数年前に開業された方ほど、いまの運用が古いままになっています。

当事務所は周南市の行政書士事務所です。許可申請だけでなく、取得後の運用のご相談にも対応しています。金属くずを扱われる方は、山口県の金属くず類回収業の許可・特定金属くず買受業の届出とあわせてご相談ください。

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古物商許可・金属くずのご相談は、地域の行政書士へ

周南市・下松市・光市を中心に、防府市・柳井市・岩国市など山口県東部に対応。
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周南行政書士事務所 代表 広戸克義

参考(一次情報)

※本記事は一般的な解説です。個別の事情により取扱いが異なる場合がありますので、実際の運用の前に管轄の警察署または当事務所へご確認ください。
※2026年8月22日更新(令和7年10月1日施行の施行規則改正に対応)